野田総理が税と社会保障の一体改革に極めて気合が入っていると聞いていたので、燃えるが如き施政方針演説をするのかなと一分の期待を持っていましたが、残念ながら聞いているうちに白々した気分になってきたというのが正直なところです。議場の雰囲気も同様ではなかったかと思います。
理由はいろいろあります。野田総理は税と社会保障の一体改革を取りまとめるために党内をどうやって説得しようとしているのか。現実には言葉だけで行動はあまり見えてきていません。また、現在円高とか諸問題がありますが、ああ、なるほどこういうことをして乗り切っていこうとしているのかという具体的な施策に関する言及はほとんどありませんでした。社会保障についても、一体消費税で何をしようとしているのかについてはほとんど触れられていません。つまり具体的行動と具体的政策が見られないというのが一つの理由です。
より根本的には、自分たちの立っている足下に対する虚心な考え方、反省が全くないのです。つまり、国民との信頼関係を作らなければ駄目だということを私は何度も指摘してきました。少なくとも本気で協議をしようとか、いろいろなことを呼び掛けるのであれば、なぜあのようなマニフェストでこのような主張をするのか、もっと真摯な反省なり言葉があって然るべきだと思います。野田総理は、「マニフェストに書いてないことはやってはいけない、マニフェストに書いてあることはすべてやると言ったら何もできない」と言ったけれども、マニフェストに書いてあることは書いてある。マニフェストに書いてないことは書いていない。なぜそれをやるのか。あるいはやらないのか。もっと真摯な態度がなければ、聞いている方が白けるのも至極当然です。
選挙の事ばかり考えるなという発言がありました。しかし自民党は所得税法附則104条や、参議院選挙で「当面10%」を掲げて戦ったのです。野田総理は全然違うことを言って選挙を戦っておきながら「選挙の事ばかり考えて」とはよくも言えたものです。その言葉をそっくり返したいと思います。
総じて言えば、「政局よりも大局を」と言ったけれど、小さなことだけを考えて実は大きな政治が全然見えていないのではないかというのが野田総理の施政方針演説を聞いた私の印象です。
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