Q:昨日、石破政調会長が記者会見で、「自民党が与党として原子力政策を担ってきたことは事実だ。間違いを起こさない政党はない。私たちも何か誤りがあったのではないか」と一定の責任があるとの考えを示しました。この問題についての総裁のご所見をお聞かせください。
A:日本のエネルギー政策の中で、原子力を位置付けながら推進をしてきた。これは、従来自民党が推進してきたことです。私は、日本のエネルギー事情、他のエネルギーも十分でないことを考えますと、今まで原子力エネルギーというものを推し進めてきたこと自体は誤っていなかったと思います。ただこのような巨大技術というのは、一度扱いを誤る、おかしなことが起こると、巨大な被害が生ずるわけでして、現に今回このようなことが起こってしまった。このことについては、我々も責任を負っているし、まずやるべきことは一体いかなることで、このようなことが起こったのかという検証を徹底的にやらなければならないと思います。
それを政府でもおやりになると思いますが、わが党でもやらなければならないし、何よりも政府のやっていることを監視していくのは国会の役目でもあります。私は、国会の中でもこのような事故原因を徹底的に究明していく、どこに問題があったのかということを十分示していくことはやらなければなりませんし、今、おっしゃったように、自民党が推し進めてきた政策でもありますから、自民党が国会の中の議論も真剣にやっていくことは避けて通れないことだと思っています。確かに、私どもの考え方の中にいくつか、過去の日本の原子力政策の中にいくつか盲点があったことは否定できないだろうと思います。そういったことをしっかり検討して、新しい体系、新しい政策を作っていかなければいけないと思っています。
Q:石破政調会長は、浜岡原発の停止について、プロセスには問題があったが、停止したことは一つの決断として判断したとの見解を示しましたが、総裁のご所見をお聞かせください。
A:私はこういう問題を考えるときに、安全第一ということなんだと思います。その考え方自体は、我々も基本的にそこに立っていかなければならないと思います。判断の根拠が十分に示されているのかというと、必ずしもそうではありません。
もう一つは、これを決める時に、担当の資源エネルギー庁も、十分に預かっていないというような政府部内でもしっかりした意思をつくる協議、議論がなされているのかどうか、その点も大変疑問があるところです。あまりに唐突で、思いつきと言われる面があるのではないかと思います。どうしてこのようなことを申し上げるかと言いますと、例えば海江田経済産業大臣の発言の中にも、やや矛盾と言って良いかわかりませんが、福島級の津波が来ても大丈夫だと前半でおっしゃっているわけですが、最後のところで80何%だからという論理がよくわからないところもあります。
もう一つ、80何%の蓋然性というところですが、今年1月に政府が発表された資料は、福島第一原発は予想0.0%でもあった。でも地震が起こった。確かに確率論など、非常に難しい話なので、そういったあたりが十分検討されたのかというところがあります。
それからさらに申し上げますと、この夏の、これからのエネルギー、需給計画というようなものに、どれだけ検討がなされたのか、きちっとそれが整理されていくのかということが、現実では非常に大事だろうと思います。ですから、関東・中部・関西、この夏、本当にやっていけるのか、東電は中電からの電力融通100キロワットを織り込んでいるし、中電は関電からの融通を期待しているわけです。福井県知事は、点検停止中の美浜原発の再開には反対だとおっしゃっている。このような議論が出てくる背景には、浜岡を止めるのかという点について、十分整合性のある説明が出て来なければ、疑問・問題点が出てくるのは当然だろうと思います。さらに心配されますのは、静岡県に関するいろいろな風評被害のことであります。そういった問題点を十分に検討していくのか、どうか検証していかなければならないと思います。
Q:総裁は、事故の原因究明について、国会の役割が重要だと発言されましたが、党内で、議員立法で事故を究明するための調査委員会を設けようとする法案を出そうとする動きがありますが、総裁のご所見をお聞かせください。
A:どういう形が最適か、まだ、これと決めつけるような考えを持っているわけではありませんが、大事なことは原発政策の遂行は、政府が責任を持って行うわけですが、政府も検討されるでしょうが、政府の外で検討がなされるのがポイントだと思います。
Q:原発の賠償の問題で、東電の関係ではリストラ策が示されていますが、現状のスキームについての政府の考え方をどのようにみておられますか。
A:まだ政府案の詳細をよく聞いておりませんので、骨子ぐらいのことしかわからないですが、大事なことは、4点あると思います。第一は、被害者に確実に賠償がなされ得るかどうか、なされなければならない。当然そういうことです。仮払いも含め、遅すぎるという声もありますが、そういうことが第一です。二番目に、さはさりながら、電力の安定供給ができなければ、国民生活にも支障が生ずるし、日本の経済的な基盤もおかしくなるわけですから、電力の安定供給ができるかどうか。三番目の視点として、これだけ大きな災害が起こったわけですから、その国民負担というものが最小になるようにしなければならないということだとも思います。それは、税にするのか、電気料金でまかなっていくのか、いろいろな可能性や考え方があると思いますが、そういったことをしっかり考えていかなければならないのは当然のことだと思います。もう一つ、電力会社というのは、社債市場はじめ株式市場、マーケットへの非常に大きな影響があるわけですので、そういう金融市場の安定をあまりにも損ねてしまうと、おかしくなってしまう。そういう金融市場、マーケットへの影響を十分考えていかなければならない。そういう観点が大事だと思っています。そういう観点から政府のスキームも十分検討していきたいと思います。あの中でわからないのは、株式責任を求めるのか、求めないのか、そのあたりも十分わからない。あのスキームですと、結局電力会社が国の負担が1200億円で、交付国債を出すが、あとは電力会社ということになりますと、電力会社もリストラを十分にするということが前提ですが、あのスキームでは、最終的には電力料金ということになってくるのではないか。その国民負担や産業に与える影響はどうなのか、十分検討する必要があるのではないかと思います。
Q:菅総理の浜岡原発の停止要請について、安全第一を考えたのだろうと発言されましたが、つまり浜岡原発を止めたこと自体に関しては、菅総理の考えに賛同するということですか。
A:ひとつの選択だろうと思います。ただそれに関してどういう根拠で判断されたのかというのは、必ずしも整合的な説明があるとは思えないということを申し上げました。もう少し、そこの判断の整合性、全体性のある説明をされる必要があると思います。
Q:東京電力の賠償スキームについて、枝野官房長官は電気料金の値上げについては否定していますが、この賠償に関しては誰が一義的に負担していくべきだとお考えですか。またこのスキームに関して、法案として出された場合、自民党としてはどのような対応を行いますか。
A:先ほど申し上げたように、対応は、原則は4つくらいあると思いますが、まだ十分にその形が我々のところまで届いていないので、それを見て検討したいと思います。枝野さんは、電気料金は上げないとおっしゃったんですか。
しかし、あれを見ていると、政府が出すのは千二百億円。交付国債は出します。しかし、あれだけのものを、結局、交付国債をあの基金の中に入れて、最後は東電が償還するという図式に見えますので、それをどう賄うのか。それはリストラでだすということもあると思いますが、それでは当然に限界があるだろうと思います。
そうすると、それは長い目で見れば、電気料金ということになる図式ではないかなと思いますが、そのあたりも含めてしっかりと検討したいと思います。
Q:東電の賠償責任について、自民党として独自案を出すお考えはありますか。
A:現在では、まだ独自に出すというところまでは考えていません。政府の考えたものが行き届いたものであれば出す必要はないので、そこを十分に見ていきたいと思います。
Q:過去の原子力政策に盲点と発言されましたが、どのような点をお考えになっていますか。
A:全体は、私どもは全部を把握しているわけではありませんが、どうやって今のまだ安定していない原発を抑え込むかというようなことに関しても、例えばアメリカですと、ミサイル等で攻撃された場合に、原発がどうなるかということを想定して、そういう場合、被害を最小限に食い止めるオペレーションをどうするかはあったんだと思います。しかし、私の知る限り、わが国はそういう自然災害というものはある程度考えていたと思いますが、自然災害も今は言われているように、この程度という想定を超えたものが来たときにどうなるのか。そしてそうなったときに、どう抑え込んでいくかという点は、必ずしも十分ではなかったのではないかと思います。
それから例えば、今回、全国から消防が動員されて対応にあたったと。これは原発だけではありません。津波や地震に対してもそうですが、法的根拠から言うと、原発を抑え込むために、消防が出なければならない、消防が出るんだという体系はどこにもないと思います。つまり保安院なり、電力事業者がやるという体系の中で物事が考えられている。しかし、結局のところ保安院や電力事業者では十分に抑え込む体制ができていたわけではないというのが、そういうふうになっているのではないかと思います。
ですから現実には、自衛隊、警察、消防に頼むということになり、あるいはアメリカや諸外国に支援を求めることになっているわけです。支援を求めることはいけないと言いませんが、これをどう抑え込んでいくかという体系に少したらないところがあったのではないかと感じています。
これはまだ十分に検討したわけではありません。いろいろ見ながら思いついたことですが、今後、この辺もよく、間違いがあるかもしれないので、検討していかなければならないことのひとつの例として申し上げました。
|