今日は当面の円高とか景気の問題について述べます。
まず最初に、今回の円高、あるいは、日本経済に与えるいろいろな問題の根本は、政府からきちっとした対応が出ず、政策不在というか、「政治不況」「政策不況」とでもいうべき状態にあるということです。
民主党は、党内の権力闘争に心を奪われて、適切な政策を打てないとマーケットに見透かされている面があると思うのです。
今回の急激な円高に対しては、ファンダメンタルズ(経済指標)の構造と違うおかしな動きがあるときには、政府と日銀が一体となって断固とした行動をとることが必要なことは当然のことです。
しかし、それと同時に、現在、欧米の通貨当局も自国の通貨安を是認するような行動をとっている中で、国際的な為替の在り方、あるいはマーケットの在り方から見て、何をしなければならないかということを、国際的にきちっと議論する必要があると思います。
よく為替介入があるのかないのかという議論がありますが、そういう問題も多くの国際的な枠組みの中で問題を整理していく努力がなければなりません。政府は覚悟を持って、たとえばG8やG20での、トップの話し合いによって問題点を整理して解決していく。この基本姿勢がなければいけない。私はこのように考えています。
経済対策については巷間1兆7千億というような議論が報道されていますが、数字から入るのは本末転倒だと私は思います。
いまの局面はどういう局面なのかということをきちっと把握して、全般的な日本の政策運営の方向性をしっかり打ちだしていく。こういうことがなければ、経済対策の総額や、細部の施策を打ち出しても、効果は出てこないと考えます。
たとえば、企業経営者は自分の会社の雇用を維持できるかどうかとか、あるいは設備投資をするかどうかということを迷っておられるときに、日本政府全体として、そういう方向でやっていくという確信を持てるかどうかが判断を左右します。個々の数字の話ではなくて全体の方向性を打ち出さなくてはいけないと考えます。
リーマンショックの後、自民党が政権に在った時、「全治3年」ということを打ち出しました。この期間、政府は責任を持ってコミットメントしてくれるという根本的な方向性をしっかり打ちだしていく必要があると私は思っております。政府に特に求めたいのはその、基本的な姿勢をしっかり確立せよということです。
では、どういう基本的な方向性を持ってやっていくかということですが、家計のみに着目して、そこに給付をしていくというような態度ではなかなか乗りきれないだろうと私は思います。
雇用をどうやって生み出していくかを考えると、企業が頑張れる方向性を打ち出していかなければならない。あるいは我が国の産業の競争力をどのように引き出していくか、育てていくかという観点も当然なければなりません。さらにもう少し早く言えば、国際競争力維持の観点から税制はどうあるべきか、法人税はどうあるべきか、も中長期的視点からきちっと打ち出していく必要があると思いますし、もちろん基本的なイノベーションを起こすためには技術革新などが必要です。そういったものに対してもきちっとした方向性を打ち出す。そうした中で数字や、個々の政策のパーツを出していくということでなければ経済対策が効果を生じることはありません。
今の一番の問題点はそこが欠けているということです。「政策不況」あるいは「政治不況」という色彩があると述べたのはそういう意味です。
現在、民主党では代表選に向けて様々な議論があります。は民主党の党則でこの時期に代表選をやることになっていますから、民主党としては当然のことだと私も思います。しかし、問題は民主党が与党であるということです。代表選をやりながらも、きちっと現下の問題に対応する。そういう方向性が出ないようであれば、全く本末転倒という謗りを免れなくなると思います。
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